ワルプルギスの夜は4月30日から5月1日に中欧や北欧などで広く行われる行事。夏の到来を告げるケルト文化の祭典ベルテーン祝祭の異教の休日に関連する。
ドイツではケートハブンという春の祭があり、この前夜に邪悪な魔女達が宴を催す。この宴(サバト)が行われる夜がワルプスギスの夜。
ハロウィンの日である10月31日は死者が訪ねてくる日と考えられていた。
魔女やモンスターなどの邪なものから身を守るために、魔除けの焚き火や仮面を被り身を守った。
ハロウィンとは悪霊を追い出すためと秋の収穫を祝う儀式だったのだ。
ワルプルギスの夜は魔女たちの夜という意味を持ち、伝承によればイングランド七王国ウェセックス、魔術や悪魔を祓う魔封じの聖人ワルプルギスの聖なる記念日が5月1日である。
それに対抗してブロッケン山で悪魔とともに谷の広場に集まり、火を大きく囲んで大きく輪になり踊った後、悪魔のお尻にキスをして結婚することで新たな魔力を手に入れたと伝えられている。
このイメージは、キリスト教が広まる前からあった土着の宗教的な儀式を『異教』と見なして、如何わしいもの悪魔的なものと捉えたことから広まって行ったとも伝えられていた。
魔女たちにとっては大事な日であり、神に叛く魔力的諸力が増大すると言われる。なのでアニメや小説などでも表現の題材として使用されることが多い。
北欧ではこの祭りは主神オーディンがルーン文字の知識を得るために一度死んだ事を記念するもので、死者と生者の境が弱くなる時間とされている。
篝火で生者の間を歩き回る死者と無秩序な魂を追い払い、光と太陽が戻るメーデー(5月の日)を祝う事に繋がる。
共通するものは邪悪なものが絡んでいることだ。
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(Johann Wolfgang von Goethe)はドイツを誇る文豪。
彼が残した作品にオペラでも使用されている詩劇ファウストがある。
その詩劇の中でもワルプルギスが登場するのでその一部を紹介。
ファウストは悪魔メフィストフェレスと契約する。第一部でメフィストフェレスがファウストを魔女の住処につれていった。
ドイツのハルツ山地、ブロッケン山では、「ドッペルゲンガー」という現象が起こる。なんでも光の加減で遠くに写る自分の影が大きく見えるのだとか。
その現象が化け物と勘違いされ、魔女たちが祭りを開くワルプルギスの夜という迷信も生まれた。
その迷信をもとにワルプルギスの夜を書いた。魔女たちに混ざって乱痴気騒ぎを行っていることが書かれていた。
とくにワルプルギスの夜は中世やルネッサンスの時代の魔女的な概念となっている。
虚淵玄さんの『魔法少女まどか☆マギカ』のラストに登場する魔女ワルプルギスの夜は舞台装置の魔女として登場している。
「この世の全てを戯曲へ変えてしまうまで無軌道に世界中を回り続ける」
物語の中での立ち位置も北欧の祭りの概念と関連があり、また歴史との関わりが前面に出ていて、ファウストのワルプルギスの夜に通じる部分がある。
自分の願いの代償に人知れず魔女と戦い続ける魔法少女が、ギリシャ悲劇の頃からの王侯貴族の物語に重なる。
ワルプルギスの夜は現在、ドイツの多くの地域で復活祭の篝火として5月の到来を祝い日となっている為、スウェーデンなどでは国を挙げての行事であり、篝火を焚き、魔女の仮装をしてお酒を飲み、バカ騒ぎをする愉快な日。
観光としても人気なパーティーだ。