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残酷なグリム童話。絵本の白雪姫とはイメージが違う。

白雪姫。

愉快な7人小人たち。辛くとも最後はハッピーエンド。

だが、この原題であるグリム童話の初版は内容が今と違うのだ。

正確には残酷かつ狂気に満ちた世界だった。

 

 

現代絵本のおおまかなストーリーとして

白雪姫という美しい王女。彼女の継母は世界で一番美しいと信じていました。何でも答える魔法の鏡に「一番うつしいのは誰」と聞くと白雪姫と答えます。

嫉妬した継母は猟師に白雪姫を殺し心臓を持ってくるように命令しました。

しかし、良心から白雪姫を森の中に置き去りにし、イノシシの心臓を持ち帰りました。

受け取った王妃は心臓を塩ゆでにして食べます。

しかし魔法の鏡はまだ白雪姫が美しいといい、直接殺害を企みます。三回計画を実行するがことごとく失敗。最後の毒りんごで毒殺したが、通りかかった王子のキスで目覚め、結婚でハッピーエンド。

ここで初版のグリムと比較しよう。

 

①継母でなく実の娘。

その時に追いやられる時の年齢は7歳。幼い年齢にそのような仕打ちはかなりのトラウマものだ。

②猟師に指示したのは心臓でなく肝臓。

そもそも白雪姫の美しさを自分のものにしたいからって人肉を食べるのは狂気の沙汰。

③森にいる白雪姫を助けたのは7人の小人ではなく7人の殺人者。

人を殺した…というよりならず者で、そのため街中に住めず森に住むようになった人たち。

森に住む人たちというのはヨーロッパの社会になじめずに差別されたという人が多い。特に小人は病的に大きくなれなかった男性を意味していた。

④毒殺されたのは当時10歳の白雪姫。その美しさに惹かれた王子。

「死体でもいいから」と小人から白雪姫をもらい受ける王子も趣味が悪い。

初版のグリム原作でも王子はネクロフィリアという性癖があり、死後時間がたっていたのにも関わらず眺め続けたと書かれている。

グリム版より二百年近く昔に書かれた類話「奴隷娘」では、リーザという娘がやはり七歳の時に死の眠りにつくのだが、数年後に発見された時、「ガラスの箱に入ったままリーザは成長しており、箱の方もそれに合わせて大きくなっていた」とある。

白雪姫にも同じことが起こっていないと、どうして言えるだろうか?

つまり、王子が発見した時には白雪姫は年頃になっていて、だからこそ王子は「私の妻になるのです」と言ったのだし、白雪姫も承知してすぐに結婚式が行われたと考えられるのである。しかし、それだと時間があわない。

ただ、白雪姫の死体はいつまでも生き生きしていて眠っているだけのようだった、というのだから、本当の死体とは違う。むしろ人形を愛したり女性の人格を認めずに都合よく可愛がる人形偏愛症ピグマリオン・コンプレックスと考えるべきだろうか?

 

譲り受けた10歳の少女の死体を直接運んでいるのは召使い。

召使いが疲れてつまずき、その拍子に毒りんごが白雪姫の口から飛び出してみごと復活。

キスで目覚めるのはロマンティックを優先させたからだ。

⑤結婚式場で母を公開処刑にする。

結婚してハッピーエンドではなく、その結婚式上にきた王妃は真っ赤に焼けた鉄の靴を履かされ、死ぬまで踊らされた

全く清純ではない白雪姫。

年増に描かれる王妃は白雪姫の年齢から考えるに20代だったと予想される。

グリム童話は残酷なシーンが多いが、ハッピーな部分とのバランスを取っているだろう。グリム童話には残酷なシーンの詳しい描写はなく淡々と書かれている為、残酷な部分を軽減している。

グリム童話はそのような暴力への興味・関心を正当化するため、悪者に対して暴力をふるう話が多く、人肉主義(カバリズム)に対しても歴史的背景から相手の能力を自分のものに出来ると信じられていた。生きたまま火あぶりになる、熱く焼けた鉄の靴を履かせられて踊らされることなども実際に存在した処刑方法だった。

当時のヨーロッパはフランス革命後だったので、歴史背景もいれた作品に仕上げたのだろう。